【基本アクション①】ただ巻き
これまで100均ジグで多くの魚種を釣ってきましたが、魚種を問わずよく使うアクションが2つあります。
その一つが「ただ巻き」です。
今回、ただ巻きについて改めて考えてみたところ、釣果に関わるとても重要な概念があることに気づきました。
キーワードは「スピードキープ」と「レンジキープ」です。
この記事を読めば、ただ巻きの概念がきっと変わるはず…。
ただ巻きとは
この記事で説明するただ巻きは、ロッドの操作をせずに、リールを巻くだけのアクションのことを指します。
リールを巻くだけなのでとても簡単なアクションです。
ここで、ただ巻きのアクションを二つの方法に分けて考えてみます。
ただ巻きアクションその①:スピードキ-プ
「スピードキープ」とは、リールを一定の速度で巻く方法です。
例えば、キャストしてジグをボトムまで沈め、ボトムをすらないような一定の速度でリールを巻いて探るといったものが代表的なやり方です。
ただ巻きというと、このやり方が一般的ではないでしょうか。
ここで、ジグの動きを考えてみます。
キャストしてボトムまで沈めた後のジグの動きは、どうなるでしょうか。
ジグが遠くにある場合と近くにある場合で分けて考えてみます。

リールのハンドル1回転でラインを1m巻ける場合、
ハンドルを1回転させると、ジグが遠くにあっても、近くにあっても、理論上、ジグが動く距離は同じです。
(水の抵抗などは無視して単純化して考えています。)
ここで、ジグの移動距離を、鉛直方向(上下方向)への移動距離と、水平方向(ボトムと平行)への移動距離に分解してみます。
ジグが遠くにある時、水平方向に対するジグの角度は30°とし、ジグが近くにある時は60°とします。

斜め方向の移動距離の分解について、補足説明します。
斜め方向の移動距離は、直角三角形を作ることにより、鉛直方向(上下方向)と水平方向(ボトムと平行)に分解して考えることができます。
赤線の斜めの移動距離は、青色の鉛直方向と緑色の水平方向に分けることができます。
昔のロールプレイングゲームは斜めに進めず、縦と横しか進めなかったですよね。それと似ています。

上の図で、ハンドルを1回転してジグが移動する距離を1メートルとすると、赤線が1mを表しています。
ここで、直角三角形の三平方の定理を利用して計算します。
一つの角が30°(または60°)の直角三角形は、その辺の比は1:2:√3でしたね。
この定理を使うと、下の図のとおり、
ジグが遠くにある時の鉛直方向への移動距離は50cm(1m÷2)、 水平方向への移動距離は約87cm(1m÷2×√3)です。
ジグが近くにある時の鉛直方向への移動距離は約87cm(1m÷2×√3)、 水平方向への移動距離は50cm(1m÷2)です。

この結果をもとに考えてみると、
ジグが遠くにある時、ハンドルを一回転させると鉛直方向に50cm分移動する力が働くのに対し、ジグが近くにある時は87cmなので、ジグと自分との距離によって、ジグの上方向にかかる力は変わるということになります。
ココ重要なので、もう一度下の図で補足しますが、
ハンドル一回転という同じただ巻きの操作をしたとき、
ジグが遠くにあるときは上方向へ50cm分の力が働くが、ジグが近くにあるときは上方向へ87cm分の力が働きます。
だから、ジグが遠くにあるときは浮きあがりにくく、近くになるにつれ浮きあがりやすくなるということになります。

最初の方で、ただ巻きについて、
「キャストしてジグをボトムまで沈め、ボトムをすらないような一定の速度でリールを巻いて探るといったものが代表的なやり方です。」
と記載しました。
ジグを遠くにキャストしてボトムまで沈めた直後は、上方向へ働く力が小さい(浮く力が弱い)ので、ジグがボトムにすらないようにするには、割と速めにリールを巻かなければいけません。
しかし、そのリールスピードをキープし続けると、ジグが近づくにつれて上方向への力はどんどん大きくなっていきます(浮く力が強くなる)ので、ジグは徐々に浮き上あがり、レンジをキープできないということになります。
つまり、スピードキープとレンジキープは両立しないのです。
逆に、レンジを一定にキープしようとするなら、リールを巻く速度を徐々に落とさなければいけません。
これが、ただ巻きアクションその②:レンジキープの方法です。
このことは、ある程度釣りをしている人は感覚的に知っていると思います。
言語化して理屈で考えると、こうしたからくりであったことがわかります。
釣り場での応用
例えば、同じ釣り場で隣の釣り人が魚を釣ったとしましょう。
どうやって釣ったのか聞いてみると、「投げてただ巻いただけ」と教えてくれたとします。
しかし、これだけではスピードキープとレンジキープ、どちらで釣ったのか判断できません。
だからスピードキープなのか、レンジキープなのか、聞けるようであれば聞いてみてください。
その時のパターンをつかめるかもしれません。
実体験として、あるとき、ただ巻きをしていると小型の青物が足元までジグを追いかけてきたことがありました。
このときは、ジグのスピードを落とすとジグを追わなくなってしまいました。
こういったケースではスピードキープの方が重要です。

これに対して、キジハタを狙っていて、ボトムから50cm以上浮いてしまうと釣れなくなったことがありました。
このケースでは、レンジキープの方が重要です。

このように、スピードキープとレンジキープのどちらが良いというのは、一概に言えるものではありません。
その時の状況によって、その時のターゲットによって、どちらが有効なのかは変わります。
だから、どちらも試してみることが大事だと思います。
遠投時のシミュレーション
遠投時をシミュレーションしてみます。
80mキャストした先の水深が9m、水面から竿先まで7mの状況では、ラインを1m巻くと、上方向には約20cmしか上がりません。(図9)
水平方向に対するジグの角度は約11°なので、ほとんど水平方向へ動くことになります。
だから、遠くに投げれば投げるほど、水深が浅ければ浅いほど、足元が低ければ低いほど上方向への移動距離は短くなります。
たとえば、砂浜での釣りではこれらの条件が整いやすいので、ジグは浮かず、ほとんど水平方向へ動いているということになります。

ただ巻きが得意とするゾーン
100均ジグの釣りでは、ジグのスピードが遅くなると魚が関心を失ってしまいますので、ジグにはある程度スピードをつけて動かすことが重要です。
これまでの話を踏まえると、ただ巻きのアクションが得意とする範囲は、次の図のとおり、遠めや表層となります。

上の図では、ただ巻きでは攻めにくいデッドゾーンが発生しています。
ここをどう攻めるのか。
このゾーンは100均ジグの基本アクション2つあるのうち、もう一つの方法で攻めます。
動画公開のお知らせ
今回の内容を動画にして、you tubeにUPしました。
このご時世、なかなか釣りに行けない人も多いと思います。
釣りに行かなくても釣りのレベルを少しでも上げたいという声があると考え、
「おうちで学ぶ100均ジグ攻略法シリーズ」を作ることにしました。
現時点での制作予定本数は25本程度、順次公開。(需要がなかった本数減らします)
是非チャンネル登録よろしくお願いします。
追記:表層ただ巻きでサクラマスヒット
ただ巻きのスピードは、ジグが緩くブルブルと動くスピードが基本です。
手元に伝わらない場合はロッドティップを見ましょう。
ブルブルと小刻みに揺れます。
巻くスピードが速すぎたり、潮の流れが速いところに差しかかるとブルブル激しくなります。